雪の上高地を歩く

釜トンネル-大正池-田代湿原-バスターミナル-小梨平

 2006/3/18-19

雄大な穂高連峰の入り口であり美しい風景に魅せられて、これまで何度も訪れた上高地。
ずっと、冬の姿を見たいと思っていた。
冬の上高地には釜トンネルから歩いて入らねばならず、自力でザックを担げない僕はこれまで行くことが出来なかった。
まして雪道を歩くのだ。簡単には行けない。
雪道でのトレッキングを苦に思わない仲間を誘い、彼らのサポートを受けようやく念願を達成できた。
残念ながら快晴の天気ではなかったけれど、一瞬の晴れに見られた鏡のような大正池に映る穂高連峰、田代橋から見た梓川の雪景色、どれも思い描いていた風景だった。
そんな風景を仲間たちと共に見て、時間を共有できたことをとても幸せなことだと思う。


今回のトレッキング、どうもザックのポジショニングが悪く何度も微調整をしてもらった。
前回の上高地に使ったザックで少しは軽くなっているはずなのに、フィットしない理由がどうも分からなかった。前回はフィットしていたのだから。
落ち着いて考えるとフィットしないって感じる原因は、TNFのBIOTEXにあったようだ。
歩いている内にずり下がってきて、腰より下の位置になっていた。所定の位置ではない部分が圧迫されて、痛みを感じザックがフィットしないと錯覚していたようだ。
BIOTEXを引き上げようにも悴んだ指先に力が入らず、直すことすら出来なかった。
寒さには強いのに指、手の可動範囲が一気に狭くなる。
自分は身体障害者だって認識し直しだ(笑)

金曜日、仕事を早々に切り上げトレッキング仲間のmelさんとkさんを迎えに、JR松本駅に到着だ。
久しぶりの再会を喜び、他のメンバーであるmo-chan家バロンパパさんと待ち合わせしている、沢渡の岩見平駐車場に向かう。
車内をフラットにして大人3人が眠れる環境はすこぶる快適だ。6時までぐっすり眠れることが出来た。
身支度をして予約しておいたタクシーに乗り込み、上高地の冬季入り口である中ノ湯の釜トンネル入り口に到着だ。

釜トンネル入り口

11%の勾配で1.3km
出発前のストレッチもせず、体も温まっていない状況でザックを担ぎ、このトンネルを歩くのは本当に辛かった。
釜トンネルを甘く見ていた。
自分のペースを守りゆっくり歩いたので、少々息は切れたが心臓バクバク状態にはならなかった。

ようやく出口が見えてきた。

トンネル出口

釜トンネルを抜けると大正池までの路面は所々凍結していた。
持参したおもちゃのような軽アイゼンを装着したが、滑って転倒してしまった。
ザックの重みのせいで自力で起きあがることが出来ない。mo-chanパパとバロンパパに助けて貰いようやく起きあがる。
一瞬の油断も出来ない。大正池に近づくにつれ凍結はなくなり、雪も少しずつ深くなり歩きやすくなる。この時点でスノーシューはまだ履いていない。

穂高連峰が見えてきた。雲が少しあるがこの風景を見に来たと言っても過言ではない。
鏡のような大正池に映る穂高連峰、見慣れた岳沢カールも雪でいっぱい。
西穂から続く稜線もはっきり見える。

大正池・穂高連峰
大正池・穂高連峰
大正池・穂高連峰
大正池・穂高連峰

大正池からスノーシューを履く。
大正池から田代湿原へ続く散策路に架かる木道も雪に覆われている。真ん中に残るトレースを慎重に辿る。
落ちるわけにはいかない。

木道の散策路

雪のない季節には歩くことが出来ない田代池の東側を歩き、再び県道に出る。
ここから先上高地バスターミナルまではもうすぐだ。
ザックを下ろしちょっと長めの休憩を取る。

小休止

バスターミナルの屋根が見えてきた。
もうすぐザックを下ろせる。
当初の予定では小梨平キャンプ場で幕営しようと思っていたが、入手していた天気予報では翌日は雨が降るかもだった。雨に濡れ重くなったテントを担ぐのは嫌だったので、大きな屋根のあるバスターミナルに幕営することにした。
もう1泊するmo-chan家とバロンパパは小梨平での幕営となる。
バスターミナルに幕営することなど滅多にない機会、冬季トイレもあるし、四方は屋根から落ちた雪が積もり防風にもなる。高規格テン場だ。
小梨平幕営チームも屋根のあるキャンプ場の竈施設に設営していた。こちらも雪があるからこその環境だ。

バスターミナルで野営
ステラリッジ3
バスターミナルで野営

冬季は水場がない。大切な水は自分で持っていかなければならない。僕は2.5l持っていった。
食料も少量の水で調理できるフリーズドライを吟味した。
副食としていつもの魚肉ソーセージ。

昼食を食べテントを設営し終わる頃から雪が舞い始める。
山の天候は急激に変化する。気温も一気に低下したようだ。ウエアーの選択を誤ったな。
暑がりの僕でも寒い時は寒いか。

雪が舞う

河童橋
観光客が来ないこの季節は静寂そのものだ。

雪の河童橋

清水橋から。

清水橋から

小梨平に幕営しているメンバーのところに遊びに行き、道具やカメラ談義で時を楽しむ。
他のメンバーの装備をチェックして物欲ネタを探したり。

幕営地のバスターミナルに戻り、明るい内に夕食とする。
メニューは変わり映えのしないフリーズドライだ。
まあ、贅沢な食事は期待するべくもなし。

地で湯を沸かす

今夜はテントをステラリッジ3にした。シュラフはモンベルのULSSダウンハガー#0にシュラフカバーだ。
マットはサーマレスト・プロライト4
雪が残っている場所に設営したが、これだけで下からの冷えもなくぐっすり眠れることが出来た。
7時過ぎには眠り始め、翌日の天気を願うこともなく12時間くらい眠った。

翌朝は起きあがることがしんどいくらいの筋肉痛だ。
全く予想外のこと。タイツの締め付け場所が悪かったせいで、思わぬ負荷がかかっていたのだろう。

朝食を取り撤収に取りかかる。
天候は曇り。残念だ。
1泊のオートキャンプでも慌ただしく思うのに、バックパックのそれはもっとだ。
上高地にバックパックで来るなら、せめて2泊はしたい。
もう1泊するメンバーと別れて帰路につく。

帰路は同じ県道を歩き、上高地帝国ホテル前から梓川畔に向かう。
程なく中ノ瀬園地にある田代橋に出る。田代橋からは梓川沿いに田代湿原、大正池に向かうことにする。
このコース、冬季以外は散策コースになっており、ハイヒールの観光客でさえ歩くコースだ。
見慣れたこのコースも雪の静寂な中で見ると全く違うのだ。

田代橋から見る梓川
凍る
湿原
梓川
大正池

大正池から天候は吹雪となる。顔を上げて歩くのが辛いくらいだ。
歩いて体は温まっているのだが指先が冷たい。
凍傷ってこんな風に始まるのだろうか、と考えてしまう。

吹雪

釜トンネルの下りは快適だった。下りなので膝への負担を心配していたが、杞憂に終わりこれでトレッキングも終わるかと思うと歩調もゆっくりになる。
勝手なモノだ。

光

トンネルを抜けてトレッキングは終わった。
予約していたタクシーが来ず、待機していた別のタクシーで駐車場に戻るハプニングはあったが、無事に駐車場に戻る。
昼食を取り温泉に浸かりいつもの体に戻っていく。

多くの写真をmelさんに頂きました。ありがとうございました。

◆雪の季節にトレッキングを楽しむために。
・基礎体力をもっと付ける。
・アイゼンを用意する。
・ウエアーの選択を誤らない。

◆歩いてこそ見えた風景

鏡に映る穂高連峰

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